前売3000円までで選ぶ面白かった公演ー2012春

前回を引き継いで、4-6月に見たものの中からチケット料金が前売3000円台までのものに絞って15本。絞ってない。


青年団阿房列車』『月の岬
未来.Co『また、28日後
岡崎藝術座『アンティゴネ/寝盗られ宗介
サンプル『自慢の息子
チェルフィッチュ現在地
東京ELECTROCKSTAIRS『最後にあう、ブルー
東京デスロック『モラトリアム
はえぎわ『I'm(w)here
範宙遊泳『ゴドーを待つ人もいない』☆
三条会ひかりごけ
マームとジプシー『マームとだれかさん(飴屋法水)
中野成樹+フランケンズ『スピードの中身
酒井幸菜わたしたちは生きて、塵
康本雅子絶交わる子、ポンッ!
ままごと『朝がある


いくつかピックアップしての感想。 


圧巻の作品が多かった。
この中で再演モノは青年団・サンプル・三条会・中フラだが、どれも信じられないくらい面白かった。
再演ということにおいては、ホンよりも演出の変化が多かったという話は多い。再演でなくとも既存戯曲を用いる場合(上で言うと岡崎藝術座の公演)も演出に目を向けるのは自然なことだろう。ホンはしっかり残るが、演出に関しては記録というものがやはり難しい側面がある。そのため、力のある書き手がしっかりと記述、評価をしていくことが必要である*1
ただ、長い活動をしている作家は研究が進んでいるので資料的な面から言えば、その辺りはやはり優位であろう。だが、それなりに活動している若手〜中堅をどのように評価していくのかは問題である。
彼ら・彼女らを招聘する劇場がしっかりと説明をしていくというのは1つ重要であるように思う。ただ、それを行う学芸部などの設置は例えば小劇場などでは厳しい現状はある。
再演に関してはテキストとの距離のとり方や、当時の劇作家の力や意志をどのように現代に持ってくるか、という点で勝負だったと『阿房列車』のアフタートーク山内健司さんが仰っていて、私は感銘を受けました。
追記:あっ、月の岬4000円だった。


もう一つ、この期間で注目したいのは演劇・劇場の可能性である。
そこで、東京デスロック『モラトリアム』、範宙遊泳というよりは主宰の山本卓卓と制作の坂本ももであろうが『ゴドーを待つ人もいない』を取り上げたい。

『ゴドーを待つ人もいない』はその企画における意図が面白い。
俳優の登場しない演劇作品である。その都度その都度スタッフが色々と手を加えて舞台を変化させていく。特にプロジェクターでのテキスト表示は物語の時間経過と劇場の時間経過の双方を意識させた。
これは、私は残念ながら拝見していないのだが東京デスロック『CASTEYA』を引き継いでいるように思われた。もちろんピーター・ブルックも然り、そして前回のエントリのモモンガ・コンプレックスの作品にも通じているところはあるだろう。
インスタレーションではなく、ハプニングでもなく、こういった俳優・演劇における可能性を探っていく、それをスタッフ志望の学生と共にクリエイトしていくということで、ベケットを用いたことはこちらにもしっかりと意図として伝わってくる。
なんと来月には再演で『東京アメリカ』がやるという。まずこれを。
『モラトリアム』は8時間、いつ入っても出てもよい作品。会場内は出演者とも観覧者ともつかぬ、全員が参加者のような様相。客いじりというのはこの公演が終わった後で某所で問題となったが、観客がその場で起きることに参加するかどうかもここではその人間の選択次第であり、その手つきには感服せざるを得なかった。


役者に関することだが、別の可能性だと大石将弘が一人芝居を行ったままごとの『朝がある』も素晴らしかった。
記録映像監督を選ぶCMコンペやままごとの新聞など様々な試みがあり*2、公演が待ち遠しかった。
話を戻すと演出もさることながら、テキストと共に、振付や歌など俳優の力を広く見せるものであったと思う。ここに載せていないものだと川口智子と辻田暁のクレンズドプロジェクトも出演者にかなりのものを要求するような作品であったように思う。

上記にはないが、ブルーノプロデュース『サモン』は、これまでのドキュメンタリーシリーズにおいて為されていた演出がガラっと変わり、可能性を感じさせた。魔法のようにそれぞれの「日記」をつないでいくことから、役者の身体とそのテキストの結びつきや分断に強く迫っていたと私は思う。それが成功したかと言われると難しいところではあると思うが、要はこの次にこういった試みをする時にどのようになっているのか、それが楽しみである。
見るほう、作るほう、じっくり向き合えたらいいなと思う。そういう環境整備を作りたいですね。
あと、関係ないですがFacebookページ増えてきたような……というかよく見るところの制作陣の意向なのかしら。


以上、さっくり。観劇は3ヶ月合計で35本くらいでした。

*1:MOMAのように無形のパフォーマンス的作品も買い取り、収蔵している事例もある。

*2:最近だとサンプルも雑誌を作ったりしていたが、ままごとで言えばキレなかった14歳♥りたーんずでも紙媒体を作っていたことも思い出す。ちなみにこの企画は個人的には伝説的と言っていいくらい。