夏目友人帳参の第6話が面白かった

夏目友人帳 参 第六話「人ならぬもの」
脚本:花田十輝 絵コンテ:寺東克己 演出:園田雅裕 作画監督:松本文男
流れるような繋ぎなど気になった2つの事柄を。

キャラクターにかかる枠と影

  • 予兆と現状と併せ持つもの。

1.翼の妖怪が夏目に迫っている危機を伝え助けを請うシーン。
ここでは妖怪の正面にカメラがあるが焦点は後ろの窓にあり、妖怪の肩越しに正面の夏目を見据えている形になっている。夏目に言葉は届いているが、その反射=返答はここでは判然出来ない様子を、両者を正面の切り返しで見せずに夏目の真剣な横顔が映されることで見えてくるように思う。*1
妖怪はその窓から去っていくので、枠に捕らわれることはないのだがこの先の不穏な空気が感じ取れる。


2.最初に夏目が襲われるシーン
ここはその前のシーンからの繋ぎが美しく、襲撃者の情報を集めるために夏目は妖怪に聞き込みを行うのだが、ここでキャラクターの向きを交互にしていて右往左往感を出している。
最後の河童との会話で重要な情報となる回想シーンが出てくるが、これは回想と不穏なことであるがゆえにアレ・ブレな画面で襲撃者が誰かは判別できない。そして、画面が現在に戻ってくると夏の暑さを象徴とするモヤモヤがあるが、これは「誰か判別できない回想→モヤがにゃんこ先生の顔にかかる→傘で顔が見えないが襲撃者とすれ違う→襲撃者の顔が傘のアップから傘が外れて現れる」という見事な流れになっているのだ。*2
その後、何とか逃げた屋内でも襲撃されるが、ここでも敵は天井板や戸など枠から襲ってくる。名取さんに助けてもらった後にもカーブミラー・スクリーン・布団等々。


3.旅館で襲われるシーン
旅館に入ってからの背後には戸があり、部屋に入ってからは背後の窓から侵入者が現れる。
この襲撃の一連は冒頭と呼応しており、にゃんこ先生が画面から外れた後に夏目の背後から不穏なものが現れることだ。つまり、夏目の正面から物がなくなり死角から物が現れるということで、そうすると物置からの脱出も同様のことではある。*3
そして最後は窓からの光と窓枠の影が夏目にかかる形になっている。

BGMとシーンの切り替わり

終盤に差し掛かるところで、名取が調査から戻ってきた後のシーンである。
ここではおかしみのある表現が用いられるが、これまで数回見られたものとは異なっている。これまでのものは人物の空想として背景として描かれていたが、ここでは名取のキラキラした漫符が見られ、同一の空間にあるのだ。
その後はBGM先行で街に聞き込みに出かけるシーンになるのだが、上記したこともあるのかBGMはやや緊張を緩めるものになっている。
聞き込みはあまり見栄えしないのでBGMを用いるのはいいし、場所が変わってもすぐに鳴らすのを止めず、名取さんのイケメンネタで少し引っ張ってBGMをしっかり聞かせて残すのもいい*4

その他

夏目が助ける決心して走るところは足とにゃんこ先生が描かれてのだけれど、あれは背動でいいのでしょうか。短いしそんなに見応えがあるってわけではないけれど、いいなぁと。
原画に安藤正浩さんもいらっしゃったそうだし、A・C・G・T回でしょうか。

*1:直後に一瞬だけ正面の笑顔に変わるのだが、これは下からの呼びかけという別要素を呼び込んでいる。

*2:ここでは夏目は決心済なのでしっかりと対峙する構図になっている。

*3:最初の襲撃時の雨であり、普通の意味でもあまりよくない意味の雨の予兆でもあるけど、こういうのもあるかなぁと。あと、ここでの方向性は下に。

*4:聞き込みについては最初と少し異なっていて、同じように向きは変わるのだが情報を引き出すときはその前と同じ向き。右から左へ(上手から下手へ)というのが共通で、重要な対峙シーンでの夏目の位置は右(上手)。