夢喰いメリー8話〜脚本の台詞とストーリーのステキな関係〜

夢喰いメリーが随所に面白いところがあって今期は大好きなのですが、この8話ではさらに世界が広がるような、そんなモノを見ることができました。
脚本について語るときに台詞も重要な点ではあるけれど、「説明か」「どういう理屈・論理なの」や改変ネタに使われたりという感じで内容については言われるものの、機能についてはあまり語られない台詞について少し。


夢喰いメリー第8話「夢回廊」
脚本:白根秀樹 絵コンテ・演出:木村延景 作画監督:音地正行

台詞

登場人物の発話で内世界のものであり、かつ外世界の観客が受け取るモノ。言葉として枠を与えているモノ。

  • ノローグ
    • ひとりごと
    • 行動を説明するもの
    • ものおもい
    • 進行
  • ダイアローグ
  • 傍白


ノローグは一人によって行われ、基本的に内世界で誰かに聞かれるものではなく内的なものを言葉で外化しているので完結性があり、ダイアローグは運動のあるものという感じ。傍白はモノローグに似ているが、一人でない。
このあたりは簡単に調べられるので簡単に。

メリー8話の台詞とか

メリー8話では、勇魚の進路の"決定"が1つの軸となっている。
流れを追うと、台詞のないアバンの進路希望調査用紙で示される
→勇魚はAパート冒頭で夢路の口を塞ぐのだが、このとき夢路は言い切った。逆にその後、夢路に勇魚は口を塞がれるが、このとき勇魚は言い切ることが出来ないため別の場所へいくことになる。
→この後にやっと勇魚は自分の思いを言葉として口に出す。
中盤まで彼女は言わない。ここで彼女が言葉にするまでに時間をかけていることがわかる。


言葉にした時点で思いは強い形になるけれど、それを語りにせずダイアローグで行い、アバンでは彼女の所作で終わりは先生の反応に笑顔という所作を使うことで少しの運動が見られる。この運動によって、この後の夢魔への展開に移ることが出来る。*1
一方で、勇魚の「絵を描きたい」という台詞は傍白と見て良いだろうが、先に下校時の一人の姿を見せたことからモノローグ的に見せてもいるし、過去回想をも持ち出すことによってもモノローグ的な様相がある。今後はこのまま上手くいくとは言い切れないが(物語中に示せるか分からないが)、勇魚自身の決心を見せるための見事な展開だったでしょう。
まさに台詞の機能をも余すことなく使った見事な脚本

シーンを隔てる音

ここまで注目した台詞は発話、つまり音であり、音はシーンを隔てるのに有効な働きをしていた
上にも挙げたシーンではあるが、進行に影響を持つ台詞のなく環境音だけのアバンがまず一つ。そして、タイトルはない世界の状況を隔てる印になる学校の鐘の音に重なったことで、聴覚に注目が集まるようになった。
Aパートの勇魚の進路指導周辺も挙げたとおりで展開と音(発話)が結びついており、勇魚が部屋に入るまでに部屋から漏れる音と机を叩く音がある。*2
そういったことよって、その後の信号からのデイドリームへの移行がスムーズになっているのではないでしょうか。*3

おまけ

光凪医院の骸骨に赤いマフラーはいいですね。

*1:河浪を映すことなどもある。

*2:この部屋内の出来事が芝居じみているところが台詞の問題と絡めて重要な点。モノローグは映像では軽減されるが、それでも音声になることが芝居じみている。

*3:今までも缶の音等もあったが、今回はよりハッキリしていたのではないか。