海月姫第5話〜外と内、化粧とスッピンの捻れた関係〜

今期から始まった「海月姫」は日常的なアニメと言えるでしょうけれど、その想像力はとどまることを知りません。
オタクの尼〜ずの面々、政治家一家の鯉淵家と女装をするおしゃれイケメンの鯉淵蔵之介。ここにポイントになる対立がありますが、それは入り組んでおり、加えてその関係を見せる想像力がとても素敵です。
特に、第5話「私はクラゲになりたい」(脚本:花田十輝 絵コンテ:大畑清隆 演出:佐々木奈々子 作画監督:青野厚司・岡辰也)では、それが余す所無く発揮されていたので、ここにその感想を残しておきます。

内と外

ここには二つの内と外の対立があります。(1)心と外見、(2)屋内と屋外です。
まず(1)に関して。
天水館の面々は、和装を好む千絵子さんはいるので一概に外見に無頓着とは言い切れないが、モードやファッションに疎いということは言えるでしょう。逆に鯉淵家は政界に携わり、蔵之介はそこにはいないがファッションをこよなく愛している。
ここで、一つ重要な尼〜ずの特技をおさえておきたい。それは「石化」である。単に動かなくなるだけではない。本当に色も石になりコロリと転がって倒れるのだ。スッピンでありながら(であるからこそ)彼女たちは幾重にもガードを施しているのです。
蔵之介は、彼もキラキラした効果を纏うことはあるが姿までは変わらないし、まだ隠していることはあるかもしれないが、彼にはストレートにぶつかる姿勢がある。また、彼は羨まれるものをたくさん持ってはいるが、そのようなことも含めて彼は新しいものを手に入れるのである。
これに関わってくるのが「化粧」である。蔵之介は月海を外からプロデュースして月海の内側の魅力を引き出す。これは(2)で後述するが、5話では尼〜ずの面々にそれを仕掛けていく行動が見られた。


次に(2)に関して。
(1)の2つの対立には共通点があり、それは建物である。両者とも大きな存在として君臨するホームがある。しかし、やはり両者(鯉淵家は蔵之介限定にします)にはその建物に対する思いの差があり、尼〜ずは篭もっていたいが蔵之介は抜け出したい場所になっている。クラゲにはクラゲに合う場所が必要なのです。

単純に、外見を塗り固めることや内に篭もることで強さを見せるのではなく、彼らの逆の面の強さが際立っているのです。
(1)と(2)で挙げたことは、OPにおいては雨の多いイギリスの映画のイメージとも結びつき、宇宙船が登場するのにも頷くことが出来ます。

5話で起こったこと

上記の(1)に関することですが、終盤のイメチェン時には鶴の恩返しが用いられ、つまり見えない向こう側での変化と人間に対しそうではないイメージで表すことで、石化以上の効果があります。
また、天水館を潰す元凶になる女社長の電話のシーンも見逃せない。絵に描いたような背景にいる化粧女に、見るからに幾つもの顔を使い分ける性悪女を被せるの見事すぎます。しかも部下が窓枠越しに見ている。煙草に口紅の汚れを付加し、とても丁寧な描写。
この天水館騒動は蔵之介の活躍が待たれますね。


(2)に関することでは、水=浴びる・容器というイメージが与えられ、水の中を漂ったり地面が液状化し月海が沈んでいったりする前半〜中盤。終盤では部屋に閉じこもった月海を蔵之介が外に出そうとする。そこで、非常に面白いのは蔵之介がドアを開けるのではなく月海が自らドアを開けて外に出ること。ガチガチに固めたガードを自分の力でもって緩めることもでき、そこから新たなものが見えてくるのです。


おまけ

説明会で月海が修を見ている視点が、すぐに出されないで水のイメージから一瞬出すあたりが締まって見える。水のイメージも与えられたことで、これはこの後の展開への布石になっています。その説明会場に入るときに、傘が投げ込まれたりっていう領域への侵入方法も面白い。