神のみぞ知るセカイ:汐宮栞編〜箱と器とその内側と〜

神のみぞ知るセカイは、ゲームと現実、主人公の桂馬と攻略対象の女の子、というように領域を如何にしていくかが面白いと思っています。
これで、特に面白かった感想といえばこちらの"日常と紙一重の世界"さんの「神のみぞ知るセカイ」第1話の演出について〜二次元と現実と桂馬」です。
私はこのときそんなに面白いと思っていなかったのですが、徐々にハマっていき、この汐宮栞編はとても面白く感じましたので今回の備忘録にと。

シーンと舞台

神のみの大きな特徴として、冒頭に挙げたようなそれぞれの領域の対立が挙げられると思います(ここでいう対立は反発という意味でなく)。特に、攻略対象の世界に段々と迫っていく、見るだけではなく入り込んでいくということが見て取れます。

そうした時に重要になるのは、キッカケです。フラグとまでは言わないでしょうけれど、これから桂馬がどのように入り込んでいくかをしっかりと作り込んでいると思われます。これがあることで、ストーリーに遅れをとらず見ていくことが出来るのではないでしょうか。

図書館とココロ

そこで本題の汐宮栞編なのですが、これはFLAG9.0〜11.0の3話にわたっており、その初回FLAG9.0ではタイトルの通りの「大きな壁の中と外」があり、上記したことがありありと描かれていたように思います。
まず、この物語の舞台である図書館について。図書館は館というだけあって、一つの建物として教室のある校舎とは別に存在している。そして、その図書館の中には溢れんばかりの本があり、図書委員として活動している栞の周りはさらに本だらけで、そんな図書館を栞は「現実の喧騒から守ってくれる紙の砦」と呼んでいます。

ところで、汐宮栞という人物なのですが、彼女はまず喋らない。その代わりにモノローグと漫符とSEが埋め尽くすほどにはち切れんばかりに出てきます。それを押しとどめているストッパーと内包している器。

この2点が図書館という外の壁と栞の性格という内の壁、そして両者共に言葉に溢れた内部があることを際立たせています。そして、その壁を壊すのが攻略であり、主人公の桂馬が行うことです。
では、キッカケは何か。それは、エルシィが図書館に入ることから始まっている。これは物語の行為についても言えますし、足を映したそのシーンは「これから入っていきますよ」ということを感じさせるには十分。また、エルシィは人間界のことが分からないことがあるにせよ、図書館のルールを次々破っていく*1、まさに異物として機能していました。
そして、外からの圧力では窓から降り注ぐ光も印象的で、光が入るというポジティブな結末をも予感させるものでした。


キッカケを過ぎた後では、本の廃棄(心地よいものの撤去)と視聴覚ブースの設置(好まない新参者の脅威)に晒されていく様子と、その逆の方向で進んでいく桂馬との関係が見られ、クライマックスでは栞が図書館に立てこもりますが、ここで外からの圧力が大きくなり、ピークに達するところで壁(天井)を破って桂馬が現れる。そして、挿入歌と共に本が舞う栞編エンディングに向かっていったわけです。

舞台とキャラクターと物語と心情と、見事に絡み合った9〜10話だったでしょう。

*1:その度に貼り紙が見えたりして面白い。