黒執事Ⅱ〜もう一度物語るために〜

黒執事と言えばセバスチャンとシエル坊ちゃんの心温まるお話しですが、一期で見事にトラウマや負の根源の排除に至り、正直なところ二期はどうするのだろうか・また似たような繰り返しなんじゃないだろうか?と思い、視聴を迷ったほどですが、いや、これは面白い。あまりに見事なストーリーテリング。その圧巻の力に感動してしまったので、備忘録をしたためたいと思います。

1.連続と断絶

初回にいきなり出てきたのは、新しい坊ちゃん(アロイス)と執事(クロード)。これは平行線の断絶で一瞬登場人物を変えただけなのかと思わせるが、後にセバスチャンとシエル坊ちゃんを持ち出すことで直線的な連続が見えてくる。勿論、それは一期の終了時から矛盾ないようにである。
しかし、矛盾はなくとも、一期のストーリーの蓄積を匂わせたことにより、その後の数話には妙な違和感を抱かせることになる。この理由は作中ですぐに説明がなされるが、記憶喪失という一期の蓄積を作品中において見失ったキャラクターが生じているためである。
つまり、この二期はシエル坊ちゃんがシエル坊ちゃんたるために改めてシエル坊ちゃんを作る物語であると。

2.上書き

では、どのように新しくシエル坊ちゃんが形作られていくのか。その方法は上書きであると思います。
一期からのキャラクターは過去を隠そうとするが、二期からのキャラクターは暴くというより手に入れようとし、その過程でシエルの記憶を改竄していく(その割に一期のキャラクターに関しては裏側というかセバスチャンの超人的な行動が見えたり裏側が見えるんですが)。
そのために、人間関係が単に網状になるだけでなく裏返ったりと複雑化していく。そういったことは拷問からが特にそれにあたり、ハンナの口腔内の眼球によって自分を自分で見つめる姿やフィルムを持ち出すことでも印象付けられる。
で、こういったことはやはり過去がなければ薄まってしまうものなのですが、序盤の各回も物語のセオリーであることを抜きにしても過去の痕跡(写真や地上絵)を印象付けており、終盤では鍵になるアロイス兄弟とハンナを描いている。また、希望と真実をないまぜにしてそのもの自体が上書きされていく迷路は大変アグレッシブな印象でした。

3.水

水の描写が多かった。川は一期のイメージからはシエルとセバスチャンの乗る船だったものが、二期では川で溺れたエリザベスをシエル自らが飛び込んで助けたり(この自ら行う描写がセバスチャンも含めて二期は目立った気がするので、一期との差異を意識してました)。涙や涎などの体液。拷問の薬品。そして最後の海?やら。
陳腐な言い方ですが、洗い流す役割はあったかと思います。私は、それでシエルをオフィーリアに見立ててました